予測タイムの読み方
下の表は、4つのレース結果例からリーゲル式で算出した予測です。距離の差が小さい予測(10Kからハーフマラソン)のほうが、大きく飛ぶ予測(5Kからフルマラソン)より一般に信頼できます。
| 元のレース | 5Kの予測 | 10Kの予測 | ハーフの予測 | フルマラソンの予測 |
|---|---|---|---|---|
| 10K in 50:00 | 23:59 | — | 1:50:19 | 3:50:01 |
| 10K in 60:00 | 28:47 | — | 2:12:23 | 4:36:01 |
| Half marathon in 2:00:00 | 26:05 | 54:23 | — | 4:10:12 |
| 5K in 25:00 | — | 52:07 | 1:55:00 | 3:59:47 |
- この式は、どちらの距離にも同等のトレーニングを積んでいることを前提とします。5Kの結果が示すのはスピードですが、フルマラソンはさらに、継続した練習量で築く持久力を要求します。それがなければ、長い距離への予測は楽観的になります。
- Vickers & Vertosick(2016)は、指数1.06が多くの市民ランナーのフルマラソンタイムを短めに見積もることを報告しています。多くのコーチは、リーゲル式のマラソン予測をベストシナリオとして扱います。
- コースの起伏、天候、標高、当日のレース運びは、それぞれがフルマラソンでは数分単位でタイムを動かします。
- 直近のレースからの予測は、古い自己ベストからの予測より意味があります。現在の走力を反映しているためです。
- どんな式もレース結果を保証するものではありません。短い距離の実力が同じランナー同士でも、個人差は非常に大きくなります。
レースタイム予測とは
レースタイム予測とは、ある距離での実績から、別の距離で出せるであろうゴールタイムを推定するものです。その土台にあるのは、技術者ピーター・リーゲルが1981年の American Scientist 誌の論文で定式化した観察です。すなわち、レース距離が伸びるにつれて平均速度は予測可能な形で低下し、記録タイムと距離を両対数のグラフに取ると、幅広いランニング距離にわたっておよそ1.06の傾きを持つほぼ直線になる、というものです。
指数1.06が意味するのは、距離を2倍にするとタイムはちょうど2倍ではなく約2.085倍になるということです。この余分な4〜5%が、距離が長くなるほど維持できるペースが落ちる分を表しています。リーゲルは、この「疲労係数」がおよそ3.5分から230分までの記録について、男女どちらの記録にもよく当てはまることを見出しました。
予測が信頼できるのは、この式の前提が成り立つ範囲に限られます。式は、ランナーが両方の距離に対して同じだけ準備・トレーニングできていることを仮定しています。しかし現実には、5Kが速いからといってフルマラソンに必要な持久力の土台があるとは限りません。市民ランナーを対象とした研究(Vickers & Vertosick, 2016)では、標準的なリーゲル指数は一般ランナーのフルマラソンタイムを数分以上短めに見積もる傾向があり、練習量を考慮に入れると精度が上がることが示されています。
このマラソンタイム予測計算機の使い方
- 直近に走ったレースの距離(5 km、10 km、ハーフマラソン、フルマラソン)を選びます。最近の全力レースほど、意味のある入力になります。
- ゴールタイムを分:秒(例:50:00)または時:分:秒(例:1:45:30)の形式で入力します。
- 残り3距離の予測タイムを確認します。入力した距離以外の予測だけが表示されます。
- 短い距離からのフルマラソン予測は、マラソン向けの練習を十分に積んだ場合のベストシナリオとして受け止めてください。
予測の計算式
リーゲル式は、距離D1での既知のタイムT1を、指数1.06のべき乗則によって距離D2の予測タイムT2に換算します。この指数が、距離が伸びるにつれて平均ペースがどれだけ落ちるかを表しています。
計算例:10Kが50:00なら、フルマラソンは 50:00 × (42.195/10)^1.06 ≈ 3:50:01、ハーフマラソンは約 1:50:19、5Kは約 23:59 となります。距離の比は4.22倍なのに、フルマラソンの予測タイムは10Kの4倍を超えている点に注目してください。指数が持久力の分のペナルティを上乗せしているのです。
この式は対称なので、長い距離から短い距離への予測もできます。ただし逆方向の予測には裏返しの注意点があります。短い距離のレースに必要なスピードを持っていることが前提になりますが、走行距離の多いマラソンランナーが必ずしもそのスピードを保っているとは限りません。
よくある間違い
- 5Kからフルマラソンを予測し、その結果を約束のように受け取ること。この飛躍は、5Kでは示しようのないマラソン特有の持久力を前提にしています。
- 直近のレースではなく古い自己ベストを使い、現在ではなく過去の走力を反映した予測になってしまうこと。
- 全力のレースではなく練習走のタイムを入力し、すべての予測が遅い方向にずれてしまうこと。
- 条件を無視すること。平坦で涼しいレースと、起伏のあるレースや暑いレースとでは、予測はうまく転用できません。
- 予測タイムどおりのレースペースを余裕なしで設定すること。長い距離で予測が楽観的になりやすいことを踏まえた余白が残りません。
よくある質問
リーゲル式のマラソン予測はどのくらい正確ですか?
リーゲルの指数1.06は、記録レベルの実績には各距離でよく当てはまります。ただし市民ランナーを対象とした2016年のVickers・Vertosickの研究では、一般ランナーの実際のフルマラソンタイムを短めに見積もる傾向があり、週あたりの練習量が少ないほどそのずれは大きくなることが分かりました。予測の精度は、5Kや10Kからよりもハーフマラソンからのほうが一般に高くなります。
10Kが50分だと、フルマラソンの予測タイムは?
リーゲル式で計算すると 50:00 × (42.195 ÷ 10)^1.06 ≈ 3:50:01 になります。これはフルマラソンに見合った持久力トレーニングを積んでいることが前提です。多くの市民ランナーにとって現実的なタイムはこれより遅くなるため、コーチはリーゲル式のマラソン予測をベストシナリオとして扱うことが多いのです。
なぜ指数が1.06なのですか?
ピーター・リーゲルが記録タイムと距離を両対数グラフにプロットしたところ、およそ3.5分から230分の範囲で、ランニングの記録がおよそ1.06の傾きのほぼ直線に乗ることが分かりました。この指数は、距離が伸びるにつれて維持できるペースが落ちていく実測上の割合を表しています。指数がちょうど1.0なら、距離が伸びてもペースはまったく落ちないという意味になります。
どの距離のレースがフルマラソン予測に最も向いていますか?
一般にはハーフマラソンです。フルマラソンに距離が近いためペースと持久力の関係がかなりよく転用できるのに対し、5Kが測っているのはほぼスピードだけだからです。Vickers・Vertosickによる市民ランナーの分析でも、入力するレースが目標距離に近いほど、また練習量を考慮に入れるほど予測が改善することが示されています。
フルマラソンから5Kへ、逆方向の予測もできますか?
数学的には可能です。式は両方向に換算でき、この計算機も入力した距離以外のすべてを予測します。式に当てはめると、4:00:00のフルマラソンは約25:01の5Kに相当します。ただし裏返しの注意点があります。走行距離の多いマラソン練習は、5Kが要求するトップスピードを必ずしも保ってくれるわけではありません。
入力した距離の予測が表示されないのはなぜですか?
入力したレースはあなたの実際の結果であって予測ではないため、計算機は残りの3距離だけを表示します。10Kのタイムを入力すれば、5K・ハーフマラソン・フルマラソンの予測タイムが返ってきます。
参考文献
- Riegel PS. Athletic records and human endurance. American Scientist 1981; 69(3): 285–290.
- Vickers AJ, Vertosick EA. An empirical study of race times in recreational endurance runners. BMC Sports Science, Medicine and Rehabilitation 2016; 8: 26.
- Tucker R, Lambert MI, Noakes TD. An analysis of pacing strategies during men's world-record performances in track athletics. International Journal of Sports Physiology and Performance 2006; 1(3): 233–245.
- World Athletics. Competition and technical rules — certified road-race distances (half marathon 21.0975 km, marathon 42.195 km).
- American College of Sports Medicine. ACSM's Guidelines for Exercise Testing and Prescription, 11th edition. Wolters Kluwer, 2021.