基準となる方法:推定ではなく測定する
心肺運動負荷試験は、VO2 maxを推定するのではなく測定します。被験者は漸増負荷プロトコルに従ってトレッドミルまたは自転車エルゴメーターで疲労困憊まで運動し、その間、呼気が一呼吸ごとに分析されます。したがって負荷の上昇とそれに続くプラトーのなかで、酸素摂取量が直接読み取られます。
基準値そのものも、この方法で得られたものです。ACSMのガイドラインが用いるFRIENDの基準値は、直接測定されたトレッドミル最大負荷試験に由来します。だからこそ、時計の推定値をそれらのパーセンタイルと突き合わせると、時計の誤差もそのまま持ち込まれることになります。
フィールドテスト:ガス分析装置の代わりに方程式を使う
フィールドテストは、ガス分析装置の代わりに回帰式を用います。この式は、ある元の研究集団において実験室測定に対して当てはめられたものです。安価で器材も要りませんが、当てはめに使われた集団の精度と限界をそのまま引き継ぎます。
クーパー12分走は1968年にKenneth Cooperが『JAMA』で発表したもので、12分間の全力走で進んだ距離を使います。VO2 max =(距離のメートル数 − 504.9)÷ 44.73です。ロックポート1マイル歩行は1987年のKlineらによるもので、歩行時間と運動後の心拍数に加えて性別・年齢・体重を用います。そのため、全力走が適さない人にも向いています。
| 方法 | 必要なもの | 求められる強度 | 限界となる要素 |
|---|---|---|---|
| 心肺運動負荷試験 | 実験室、呼気ガス分析、専門家の監督 | 最大 | 費用とアクセス |
| クーパー12分走 | 距離の分かったトラックとストップウォッチ | 最大 | ペース配分・天候・地形。若く体力のある成人で当てはめられている |
| ロックポート1マイル歩行 | 距離の分かった1マイルと心拍数の測定 | 速歩 | 心拍数の精度。速く一定のペースで歩く必要がある |
| ステップテスト | 台と計時具 | 最大下 | 台の高さとテンポがプロトコルどおりである必要がある |
| スマートウォッチによる推定 | 本体と、多くの場合は胸ベルト | 最大下のランニング | アルゴリズムの前提。精度は体力水準によって変わる |
スマートウォッチの推定値はどこまで信頼できるか
2025年の質的系統的レビューは252件の記録をスクリーニングし、ウェアラブルによるVO2 max推定に関する13件の研究を採用しました。その多くは、胸ベルトとFirstbeatのアルゴリズムを組み合わせたガーミンの時計を対象としています。いずれの研究でも比較対象は実験室のトレッドミル漸増負荷試験で、機器側の推定値は屋外での最大下ランニングから得られたものでした。
13件のうち7件が、ウェアラブルを妥当または許容できると判断しました。平均絶対パーセント誤差が5%未満だった研究が1件、5〜10%だった研究が4件です。もう一方の端では、系統的な過小評価を認めた研究が1件あり、平均差は−4.51 ml/kg/分、平均絶対パーセント誤差は15.78%でした。
レビューの著者らは、妥当性が示されたのは健康な非鍛錬成人、市民ランナーなどのレクリエーション競技者、チームスポーツのプロ選手であり、エリート持久系競技での有用性には疑問が残ると述べています。ここから実務的な帰結が出てきます。数 ml/kg/分の誤差があれば、値は区分の境界をまたいでしまいます。したがって時計の数値は、どの区分に属するかを主張する材料ではなく、自分の推移を追う材料として使うほうが適しています。
自分をごまかさずに結果を比べる
どの方法にもそれぞれの誤差があるため、意味のある比較は方法をそろえた比較だけです。同じトラックで1シーズン空けて行った2回のクーパーテストには意味があります。一方、クーパーテストの結果を昨年の時計の推定値と比べても、測っているのは主に二つの方法の差です。
- 時間を追って変化を見るときは、方法をそろえる。
- 条件もそろえる。風・暑さ・地形・ペース配分は、いずれもフィールドテストの結果を動かします。
- どの尺度から区分名を読んだかを記録する。公表されている表ごとに区分名は異なります。
- 推定値は点ではなく帯として読み、境界に近い値は測るたびに区分が変わりうると心得る。
- 最大負荷テストは負担が大きく、適さない人もいます。まず医師の助言を優先してください。
よくある質問
VO2 maxを最も正確に測る方法は何ですか。
実験室での心肺運動負荷試験です。漸増負荷プロトコルに従って疲労困憊まで運動する間、呼気が分析されます。方程式から推定するのではなく酸素摂取量を直接測定する方法であり、分類表の土台となっている基準値もこの方法で得られています。
スマートウォッチのVO2 maxはどのくらい正確ですか。
13件の研究を扱った2025年の系統的レビューでは、7件がウェアラブルを実験室測定に対して妥当または許容できると判断しました。平均絶対パーセント誤差が5%未満だった研究が1件、5〜10%が4件、一方で過小評価を認めた研究が1件あり、その平均差は−4.51 ml/kg/分、誤差は15.78%でした。精度は体力水準によって変わり、エリート持久系選手での有用性には疑問が残ります。
クーパーテストとロックポート歩行テストでは、どちらがよいですか。
向いている人が違います。クーパー12分走は全力の運動を要し、若く体力のある成人で当てはめられているため、すでに強度の高い走りに慣れている人に向きます。ロックポート1マイル歩行は速歩と心拍数の測定だけで済み、方程式に年齢・性別・体重を含むため、全力走が適さない人により向いています。
測るたびにVO2 maxが変わるのはなぜですか。
フィールドテストはパフォーマンスからVO2 maxを推定するので、パフォーマンスに影響するものはすべて推定値に影響します。ペース配分、風、暑さ、地形、シューズ、睡眠、直近の練習からの間隔はいずれも結果を動かし、心拍数を用いるテストではその測定誤差も上乗せされます。二つの結果を比較可能にするのは、条件をそろえることです。
時計の推定値をACSMのパーセンタイル表と比べてもよいですか。
比べても構いませんが、注意点も一緒に持っておいてください。パーセンタイルの基準値は直接測定された実験室試験から得られているため、推定値を突き合わせるとその誤差が比較に加わります。数 ml/kg/分で区分の境界をまたいでしまう以上、時計の数値は、どの区分かを決める材料よりも、自分の推移を追う材料として適しています。
参考文献
- Cooper KH. A means of assessing maximal oxygen intake: correlation between field and treadmill testing. JAMA 1968; 203(3): 201–204.
- Kline GM, Porcari JP, Hintermeister R, et al. Estimation of VO2max from a one-mile track walk, gender, age, and body weight. Medicine & Science in Sports & Exercise 1987; 19(3): 253–259.
- Železnik Mežan L. Accuracy of wearables for determining the maximal oxygen uptake and lactate threshold: a qualitative systematic review. Frontiers in Sports and Active Living 2025; 7: 1707991.
- Kaminsky LA, Arena R, Myers J, et al. Updated reference standards for cardiorespiratory fitness measured with cardiopulmonary exercise testing: data from the Fitness Registry and the Importance of Exercise National Database (FRIEND). Mayo Clinic Proceedings 2022; 97(2): 285–293.
- American College of Sports Medicine. ACSM's Guidelines for Exercise Testing and Prescription, 12th edition. Wolters Kluwer, 2024.