損益分岐点が実際に測定しているもの
損益分岐点分析は、事業の総売上高が総費用(固定費と変動費の合計)と等しくなり、利益がちょうどゼロになる販売水準を特定するものである。米国中小企業庁(SBA)は、これをアイデアが財務的に成り立つようになるまでにどれだけ販売する必要があるかを見積もるための、事業計画立案における中核的なツールと位置づけている。
固定費は、分析対象期間中の販売数量が変動しても動かない費用であり、家賃、固定給の人件費、保険料などが該当する。変動費は、材料費、単位当たりの配送費、販売1件ごとに支払われる販売手数料など、販売される各単位に応じて増減する。価格と単位当たり変動費の差が貢献利益であり、これは利益が発生する前に固定費を回収するために各販売が貢献する金額を示す。累積した貢献利益によって固定費が完全に回収された後は、追加で販売される1単位はすべてそのまま利益に貢献する。
計算式と計算例
単位当たり貢献利益は販売価格から単位当たり変動費を差し引いたものである。損益分岐点(数量)は固定費をその単位当たり貢献利益で割ったものである。損益分岐点(売上高)は、単純に損益分岐点の数量に単位当たり価格を掛けることで求められる。
固定費50,000ドル、単位当たり価格40ドル、単位当たり変動費25ドルの事業を考える。単位当たり貢献利益は40ドル−25ドル=15ドルである。損益分岐点(数量)は50,000ドル÷15ドル=3,333.3、切り上げて3,334個となる。損益分岐点(売上高)は3,334×40ドル=133,360ドルである。貢献利益率(貢献利益を価格で割ったもの)は15ドル÷40ドル=37.5%であり、これは売上高1ドルのうち37.5セントが固定費の回収、さらにその先の利益に充てられることを意味する。
- 単位当たり貢献利益 = 価格 − 単位当たり変動費(40ドル − 25ドル = 15ドル)
- 損益分岐点(数量) = 固定費 ÷ 単位当たり貢献利益(50,000ドル ÷ 15ドル = 3,333.3 → 3,334個)
- 損益分岐点(売上高) = 損益分岐点(数量) × 単位当たり価格(3,334 × 40ドル = 133,360ドル)
- 貢献利益率 = (貢献利益 ÷ 価格) × 100(15ドル ÷ 40ドル = 37.5%)
なぜ数量は常に切り上げるのか
3,333個を販売した場合、単位当たり貢献利益15ドルとして得られる貢献利益は49,995ドルとなり、固定費50,000ドルにわずか5ドル届かない。実際に固定費を回収して事業を利益に転じさせるのは3,334個目の販売であるため、損益分岐点の数量は切り捨てや最も近い数値への丸めではなく、必ず次の整数へ切り上げる。3,333個を「ほぼ達成」とみなすことは、たとえわずか数ドルの差であっても、損益分岐点に本当に必要な数量を過小に見せてしまう。
単純な損益分岐点モデルが破綻する場面
このモデルは、単一の製品(または複数製品にわたって一定の販売構成比)を前提とし、価格と単位当たり変動費が販売数量にかかわらず一定であることを想定している。実際の費用には段階的な変化が生じることがあり、十分な数量増加が新たな設備や追加シフトといった追加的な固定費を必要とする場合、損益分岐点そのものが移動する。固定費は、分析対象となる生産量の関連範囲内でのみ「固定」なのである。
利益率の異なる複数製品にわたって平均価格や平均費用を用いることは、このモデルがよくつまずく点であり、個々の製品の実際の損益分岐点を大きく見誤らせる可能性がある。損益分岐点は一度きりの計算として扱うのではなく、価格・費用・固定費構造が変化するたびに見直す価値がある。
よくある質問
損益分岐点(数量)はどのように計算しますか?
固定費を単位当たり貢献利益(価格から単位当たり変動費を差し引いたもの)で割り、次の整数へ切り上げる。固定費50,000ドル、価格40ドル、変動費25ドルの場合、貢献利益は1個当たり15ドルとなり、損益分岐点は50,000ドル÷15ドル=3,333.3、切り上げて3,334個となる。
損益分岐点(数量)と損益分岐点(売上高)の違いは何ですか?
損益分岐点(数量)は固定費を回収するために販売する必要がある個数であり、損益分岐点(売上高)はその個数に単位当たり価格を掛けてドル換算したものである。上記の例では、3,334個を40ドルで販売すると損益分岐点の売上高は133,360ドルとなる。
貢献利益率は何のために使われますか?
貢献利益率は貢献利益を価格に対する割合として表すもので、価格帯の異なる製品同士を比較しやすくする。37.5%という比率は、売上高1ドルのうち37.5セントが固定費の回収、そしてそれが回収された後は利益に充てられることを意味する。
損益分岐点に達すれば事業は黒字ということですか?
損益分岐点に達するということは、売上高が総費用と正確に一致し、利益がゼロであることを意味し、黒字ではない。利益が生まれ始めるのは販売数量が損益分岐点を超えてからであり、それを超えて販売される1単位はすべてその貢献利益全額を直接利益に貢献させる。
参考文献
- U.S. Small Business Administration. Write your business plan — break-even analysis guidance. sba.gov.
- Horngren CT, Datar SM, Rajan MV. Cost Accounting: A Managerial Emphasis. 16th ed. Pearson, 2018.
- Brealey RA, Myers SC, Allen F. Principles of Corporate Finance. 13th ed. McGraw-Hill Education, 2020.